喜多方の思い出

南宜堂

2012年10月02日 23:22

10月7日・8日の二日間、会津若松市と喜多方市で一箱古本市が行われる。昨年も開かれたBook Book Aizuの催しである。
会津若松は毎年のように行っているが、喜多方を訪れるのは久しぶりだ。
まだ、出版社に勤めていた頃だから30年近くも前のことだが、会津生まれの版画家斎藤清先生の自選作品集というのを手がけたことがあった。当時の私は営業部に籍を置きながら編集の仕事もやっていたので、編集・営業双方の仕事で何度も会津に行った。
斎藤清先生は鎌倉の長谷というところに住んでいて、年に何回かは会津を訪れ、柳津町の従兄妹の方の家に滞在して取材をされていた。数年前柳津町の斎藤清記念館に行ったのだが、近くの従兄妹の方の家にあった斎藤先生のアトリエが公開されていた。眼下に只見川を望む高台で、そこで食事をいただいたことなどを懐かしく思い出した。その時一緒だった斎藤清先生も奥様も斎藤先生の作品の写真を撮り続けていたMさんももうこの世の人ではない。
作品集が完成して今度は営業に福島県内の書店を回った。その時に訪れた喜多方での食事の思い出は、今考えても不思議な体験だった。ブックスIという書店の社長と昼を食べに入った食堂でのことだった。土間の食堂の奥の家族の居住空間までも昼時にはテーブルを置いて、客が食事をしているという繁盛しているみせだった。
当時はまだ喜多方ラーメンというのはそれほど有名ではなく、社長は大食らいの私に気を使っていただいたのか、カツ丼を注文してくれた。
出てきた丼を見てびっくりした。普通のカツ丼のほかに丼がもう一つ、これはラーメン丼で、中には並々とラーメンのスープが入っているのだ。これが喜多方流なのかと思った次第だが、その時I社長にそのことを聞いてみたのか、今となっては忘れてしまった。
その後、喜多方ラーメンが全国的なブームとなり、雑誌などに私たちが訪れたM食堂のことが行列のできる店として紹介されていた。今となってはあのM食堂でカツ丼を頼む人はいないだろうが、未だに味噌汁がわりにラーメンスープが出てくるのだろうか。

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