真田幸村と楠木正成

南宜堂

2009年05月25日 00:43

 戦国の英雄真田幸村について書いてきましたが、この幸村は、南北朝期の英雄楠木正成との共通性がよくいわれます。例えば、劇作家山崎正和は著書「室町記」の中でこんな風に書いています。
 青葉茂れる桜井の 里のわたりの夕まぐれ」ではじまる文部省唱歌にも歌われるように後醍醐天皇への忠義に死を覚悟して息子と別れる悲劇的な英雄である正成ですが、一方で「その反面、正成のイメージには、どことなく明るい弾みがそなわっていることも事実である。講釈の聴衆が胸躍らせて正成の話を聞きに集まるのは、やはりあの奇策百出の千早城の戦いがあるからだろう。正成の人気はこの点で真田幸村に通ずるものがあり、のちの講談に活躍する怪盗や忍術使いにも共通するものがあるといえる。」(「室町記」)
 それにしても、今の時代楠木正成を知っている人はどれくらいいるのでしょう。戦後の教育を受けた私たちはすでに、親が口ずさむ「青葉繁れる桜井の」の歌を通して輪郭を知っている程度です。
 どうも戦前の教育を通して忠臣の代表のように宣伝されてしまったせいか、楠木正成についてアレルギーが起こってしまい、まともにこの人物を取り上げる人がいなくなってしまったようです。

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