テレビのちから

南宜堂

2013年03月12日 09:14

県内の某テレビ局の番組を製作する会社から、光風舎が発行した本に載っている写真を使わせてほしいとの電話があった。この本は復刻版で私に権利がないと説明し、ご自由にどうぞと申し上げた。こういう依頼は時々ある。昭和初期の善光寺表参道を写した貴重な写真だからだろう。町ににぎわいを的な番組にはよく使われる。許可願いは書面のこともあるし直接番組担当者が店に来てくれることがあるが、電話だけというのは初めてのことだ。
電話を切った後で少し釈然としないものを感じた。私は復刻しただけのものだが、それなりに思い入れのある本である。原本との出会いから復刻まで、そしてその後の反響を記していくとひとつの物語にもなるのだ。もちろんそんなことは製作会社の人が知るよしもないこと、彼らは単なる素材として絵になるものを探していただけなのだ。
地方の場合、テレビ・新聞・ラジオといったメディアの力はまだまだ絶大で、紹介されたことで売り上げが伸びるという話はよく聞く。もちろんメディアの人々がそんなことを鼻にかけてということはないだろうが、無意識のうちにそういう奢りが現れることはないのだろうか。紹介してもらう側もそのために媚びへつらうような態度にはなっていないのか。
先の写真集についても、私に許諾権があるなら番組の製作意図を聞いて、納得できたものだけに使ってもらいたいと思っている。メディアに対してはそのくらいの意地を張ってもいいのでは。

関連記事