2007年06月20日
名画座
京都一乗寺にあった京一会館は、とても名画座などといえた代物ではありませんでした。東京に住む友人たちが、池袋文芸座なんかの話をして、今週は大島渚の作品一挙上映だとか、誰それの特集があるとか、そんな話題で盛り上がっていても、私にはよその世界の出来事だったのです。
広い範疇でくくれば、京一会館も名画座といえないこともなかったのです。事実後年になって東京の雑誌なんかにも紹介されていたようで、ユニークな映画館としてその存在を聞いてくる友人もおりました。
しかし、この映画館は市場の二階にあってどちらかというと場末の映画館でした。椅子なんかも満足に座れるものは少なく、禁煙とうたってはいるものの上映中でも堂々と煙草を吸っているものがいたり、映画を見ながら弁当を食べているものもおりました。かくいう私もそんな一人だったのですが。
上映する映画も、前にお話ししたように、寅さん健さん、仁義なき戦い、にっかつロマンポルノから不良番長、黒澤明とごった煮でした。名画座にありがちな映画文化を支えるのだいう気負いなどみじんもなく、どちらかというと客にこびる映画館だったような気がします。
というように京一会館の悪口を並べてみましたが、私はこの映画館嫌いではなかったというか、むしろ好きでした。200円で4本見られ、その内容もバラエティに富んでいたわけで、下宿から歩いて10分ほどで行ける映画館に毎週のように通っていました。
京都一乗寺は、宮本武蔵と吉岡一門の決闘で有名ですが、かつては農村地帯、その後住宅が増え、農家は学生相手の下宿屋をしているというような町でした。繁華街ではないということで、映画館としては立地条件が悪かったのです。そんな地で映画館を営んでいくための苦肉の策ではなかったかと思うのです。結果的には学生から労働者まで幅広い観客を獲得してなんとか営業ができていたのです。
Posted by 南宜堂 at 00:49│Comments(0)