2007年12月31日

「日本霊異記」

 奈良時代から平安時代にかけての仏教説話を集めた書に「日本霊異記」があります。作者というよりは採話者といった方がいいかもしれませんが、薬師寺の沙門景戒という僧です。景戒は「日本霊異記」を書いた頃は薬師寺の僧でしたが、もともとは和歌山の方に住む私度の僧でした。奈良時代、官度と呼ばれる正式の僧のほかに勝手に得度した私度の僧が相当いたようですが、これは法律では禁じられていました。景戒は妻子を養い畑を耕すという民間人と変わらない生活をしていたようです。私度の僧は禁じられていたといってもそれは建前だけのことで、実際は私度の僧は相当いたようです。そんな私度の僧が法会と称して人を集め、仏の功徳を語って施しを受けていたようです。そんな私度僧が外来の宗教である仏教を民衆の間に広めていったのでしょう。
 さて「日本霊異記」に話を戻しまして、仏教説話集というだけあってこの書には仏を信ずることの功徳が数多く収録されておりますが、当時の人々が仏教をどのように受け入れていたのかを知るためにも貴重な史料です。何といっても多いのが輪廻転生の話です。昔の人々は死ねば、生前の行いによってさまざまな生き物に生まれ変わるということを信じていたのでしょう。
 因果応報の話も多く収録されております。仏教を信じたものが善い報いを受けた話、反対に信じないものに仏罰があたったという話がいくつか語られているのです。
 その後に盛んになる浄土信仰についての説話は少なく、まだ人々の間ではそれほど知られていなかったのだということでしょう。
 善光寺は、坂井衡平の説によりますと奈良時代の創建ということになりますが、そんな時代背景を知るためにも興味深い書です。

 さて、2007年を終わるにあたりまして、皆様のご愛顧に深く感謝申し上げます。
 過ぎた日々を記録しておくという習慣のない私ですので、いつごろからこのブログがはじまったのやら忘れてしまいました。
 人に何かを伝えるというよりは、自分が書き留めておきたいことをマイペースで綴るというスタイルを取っておりますので、自分本位のあまり良いブログとはいえませんが、それでも読んでいただいてコメントをいただけるのはありがたいことと思っております。
 来年が皆様に取りまして幸多き年でありますようにお祈り申し上げ、今年の筆を置くことにいたします。ありがとうございましたicon04



Posted by 南宜堂 at 22:22│Comments(0)

 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。