2008年01月09日

自費出版について

 年のはじめということで住所録の整理をしております。今はパソコンがあるので、訂正や追加も簡単にできます。便利な世の中になったものです。
 この一年間で亡くなった方もいて削除しなければと思うのですが、これがなかなか思い切れません。手書きの住所録ですと線を引いて○月○日逝去とすればよかったのですが、パソコンですとデータを削除しますと、すべてが消えてしまいます。その人の思い出まで永遠に消えてしまうようで、なかなか思いきって削除することができません。
 昨年鬼籍に入られた方の中に、会社勤めをしていた頃の知り合いがおります。自分の本を出版してくれないかと訪ねてこられ、たまたま私が編集者として応対して知り合いになりました。なかなか注文の多い依頼人で、自費出版でもいいのだが書店に本を並べたいというのです。自分史の類の本というのは、書店に並べてもまずは売れません。ずいぶん書き直していただいてなんとか書店に並べたのですが、売れたという記憶はありません。
 新風舎という自費出版主体の出版社が破綻しました。あまりいい噂は聞いていませんでしたし、依頼人の無知につけこんでの商法はあくどいとは思いながらも、すこし考えればからくりはわかるだろうにと依頼人に対しても責任はあるなと思ったのでした。
 本が売れない時代ですから、リスクのない出版ができるのはありがたいわけで、出版社にとって自費出版は歓迎されるのです。依頼者も自著がもてたという誇りを受け取るわけですから、お互いの満足なのですが、「売れますよ」とだまして出版させるのは詐欺でしょう。
 詐欺師としてはいいところに目をつけたというものです。文章を書く人は自尊心が強いですから、自分の書いたものは売れるはずだと思うのですね。結果的に売れなくても自己責任、執筆者の責任で済ませられます。
 自分の書いた本はまず売れないと思った方がいい。それでも本を出したいなら自分の費用で出せばいい。その時はちゃんとコストを偽りなく提示してくれるところを選ぶべきでしょう。知り合いは新風舎から単行本の出版に300万円かかると提示されたそうですが、そんなにかかるはずがないのです。その三分の一以下で本はつくれます。



Posted by 南宜堂 at 20:21│Comments(0)

 
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