2011年05月28日

なぜ今、本屋なのか

来月遊歴書房という古書店を開業される宮島さんが店に挨拶に見えました。
オープンを記念して「なぜ今、本屋なのか」というテーマでトークセッションを行うということです。同業者としてそういう問いかけは自分自身にもしなければいけないのかもしれません。
と言いながらも、私にとってこの問いはそれほど重いものではありませんでした。気がついたら古本屋をやっていたのです。
サラリーマンをやめて自営業者になった時点で、自分で生活を切り開いていくしかないわけですから、稼がないといけないのです。そのためには魚屋であっても本屋であってもいいのですが、長く出版社に勤めていたものですから、どうしても本の周辺の仕事についてしまうようです。
そうしてたどり着いた先が古本屋だったということです。宮島さんも大型の書店に長く居られた方ですので、本に関係した仕事を選ぶことになったのでしょう。
しかし古本屋も含めて本をめぐる業界というのは、将来性という点では決して明るいものではありません。そんな不安が、あえて「なぜ今」という問いかけになったものでしょう。
それと、古本屋の開業というのはある人々にとっては夢のようなことですので、それをやってしまったことへの後ろめたさのようなものもあるのでしょう。
その後ろめたさは、何ヶ月かして古本屋経営の厳しさを知ったときに吹っ飛ぶものでしょうから、それほど気にすることはないのかもしれません。
それにしても、ネットの検索でどんな本でも手にはいる時代に、あえてかたちある古本屋をはじめるということ、これはもう好みの問題でしかないと思います。
だから、そのかたちある古本屋にどんな付加価値を付け、何を発信していこうがそれは個人的な問題であって、社会的な使命などということは考えないほうが思います。どんなに頑張ってみたところで、ネットで本を買うという方向、ネットからダウンロードして本を買うという方向はどんどん進むのですから、かたちある本屋の経営はますます厳しくなる一方でしょう。
取り止めのない話になりましたが、かたちある古本屋というのはあったらいいなくらいの存在として生き延びていくのではないかと思います。なければ困るというコンビニのような存在には間違ってもなれないでしょう。生き延びる為にネットでの販売の力を借りなければならないというのも皮肉な話ですが、そうまでして続けたいということはあまり大きな声で語り合うことではなく、静かに自分の中で反芻することなのかもしれません。



Posted by 南宜堂 at 08:41│Comments(0)

 
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