2011年06月05日

古本屋の客も変わったねえ

たまたま早起きして、時計がわりにテレビをつけていたら、「小さい旅」の再放送をやっておりました。この日は「本においでよ」と題して神田神保町の古書店街のお話でした。まんざら無縁な世界でもない、興味深く拝見しました。
明治の初期からある伝統の古書店街にも新しい力が育っているというようなありきたりのテーマで、ちょっと期待はずれでもありました。
見終わってつくづく思ったのは、自分は古本屋としてはほんとにアマチュアなんだなということです。「南総里見八犬伝」の江戸時代の刊本を見る目などとてもない。出版を通して何十年も本の世界と付き合ってきたつもりですが、古本屋としてはほんのアマチュアだということです。
いっぱしの古本屋だという自負はどこかに吹っ飛びました。考えてみれば、古本屋だけで生活が成り立っていないのだからアマチュアであるのは当然のことなのかもしてません。
そうは言っても、古本の販売で家賃と光熱費くらいはまかなえるのだから、アマチュアの上かなと自惚れてしまうのがまたいけません。
多少なりとも売れたりするのは、古本屋の客が変わったからなのだろうと思います。神保町の古書店街の成り立ちは、神田に大学が集まってきたからだといいます。なんといっても古本屋のいちばんの客は大学教授や学生です。そんな客の便宜をはかるために古本屋がこの地にできたのだというのです。
そんな古くからの客とは別に、最近では学術的な本にこだわらず読みたい本を求めて古本屋に通う人が増えているようです。帳場に立っての印象では、昭和30年代の本をその時代状況に浸りながら読みたいとカッパブックスやハヤカワポケットミステリーを求めるといった風にです。
そういう古い本はなかなか新刊の本屋さんでは売っていないので、私どものような店にきていただけるというわけです。
古本屋とは様々な時代を呼吸できる場であるように思います。江戸時代は無理でも、明治、大正、特に昭和という時代を強く感じられるような場所を目指しているのですが、なかなか難しいです。



Posted by 南宜堂 at 22:51│Comments(0)

 
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