2012年10月19日

安曇野一箱古本市

書肆月影さんから安曇野でも一箱古本市がありますよという情報をいただいた。今月の27日と28日の二日間、場所は大糸線穂高の駅前だという。月曜日は帰国する娘を迎えに名古屋まで行く予定だが、その日は店番を共同経営者に頼めば参加できないことはない。急遽電話で申し込んだ。その際、申込先が市役所というのが気になった。高遠もまた申込先が市役所だったのだ。その安曇野市役所の担当の方は正直な方で、なかなか出店者が集まらないのでありがたいという。しかも一箱と言わず畳一畳くらいは構いませんと親切に言っていただいた。ここでまた私の感想など記すとクレームをいただきそうなので先に進むが、自治体がしかも町づくりを担当するような部署が推進する古本市は、市街地を活性化することを目的としたものが多いのである。
一箱古本市といっても性格はさまざまで、私が参加しただけでも推進する人たちによってその目的は異なる。高遠や今度の安曇野は市役所が主体だから、市街地の活性化が目的になる。ただ古本市だけで町おこしということはとうてい無理で、そこのところは自治体の担当者もわかっているらしく、フリーマーケットとか物産市の一環として一箱古本市を考えているようだ。別にこのことに異議はないが、高遠の場合は古本市に対する熱意が感じられなかった。
先ごろ参加した会津若松や喜多方の場合は、民間のグループが行うものだった。本好きが一日を楽しく過ごすことが主眼だから、売り上げや集客の多寡を競うということにはそれほどこだわらない。
長野の一箱古本市は一軒の古本屋が主催して行っている。昨年の秋と今年の春の2回開かれたが、私は1回目は参加したものの2回目は参加していない。古書店が主催するわけだから、販促が目的と考えていいだろう。
昨年、私は長野でも一箱古本市というものをやってみたいと思い、会津若松の古本市を経験したり、東京の相生の里で行われたブックイベントを見学に行った。その時、南陀楼綾繁さんや向井透史さん、岡崎武志さんをご紹介いただきアドバイスを受けた。にもかかわらず私は旗振り役を降りたのだが、その経緯はブログに書いたのでここでは繰り返さない。
その時私が目指したのは、古本市を行うことで潜在的な長野の古本愛好家が顕在化して、一人でも多くの人が古本と古本屋のファンになってほしいということであった。広い意味での販促である。効果が表れるには長い年月が必要とは思ったが。
軽井沢町追分の古本市もまた古本屋が主体となって行っている。森の中に佇む油屋旅館と追分コロニーという素晴らしい環境の中で、本に親しんでもらう空間を作るという狙いは具体的でわかりやすい。一箱古本市について、ブックオフで100円で買ってきた本を並べて小遣い稼ぎをするような出店者を締め出すためにも、古本市はプロ主体で行うべきというブログでの発言も、追分の空間の高い質を維持したいという思いから出たものと思う。
今週末行われる小布施の場合は目的が微妙である。主体は町の図書館で、ここは町中を図書館にという構想を持っていると聞く。

1.まちとしょテラソは、「まちじゅう図書館」という構想を掲げています。「まちじゅう図書館」とは、図書館はもちろん、ご自宅の倉庫などに眠っている大切な本を、だれでも手に届くところに出していただき、本を通して交流していただくというものです。
2.その中で、かんてんぱぱショップ小布施店から中町・観音通りをブックカフェストリートとして、本、情報、そして小布施のスイーツを楽しみ、みなさんの笑顔があふれる交流できる通りとして創出しようと考えています。
3.多くの本は埃などが付着し、クリーニングをしなければ出せない状態にあります。そのクリーニングの作業は、まちとしょテラソのブックシャワーにて埃と菌を撃退できるようになります(まもなく導入)。綺麗な本を通して、人々との楽しい交流に繋がっていくと考えられます。
ということで、誠に結構だとは思うが、春にしろ秋にしろ、前者は苗市、後者は六斎市という大きなイベントの中で行われたので、本を目的に来た人より他のイベント目的の人の方が圧倒的に多く、本来の目的がわからなくなってしまわないかという懸念は感じた。おそらく北信濃では最大の古本イベントとなっているはずだから、古本市だけで開催してみてもいいのではないだろうか。

一口に一箱古本市と言ってもその性格はさまざまである。成功例もあれば失敗例もあろう。ただ、そのジャッジの基準は出店数や来客数ではないはずだ。私がもし基準を設けるとするなら、出店した人と来店した人の満足度だと思うのだが、どうだろうか。
安曇野一箱古本市
春の小布施苗市


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Posted by 南宜堂 at 10:43│Comments(0)古本屋の日々

 
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