2012年03月30日

ブックオフの戦略は有効なのか

今の場所に店を移し、本格的に店売をはじめてから2度冬を越し、2回目の春を迎えようとしている。冬の間は厳しかった店の売り上げも、3月に入ってから少し上向いた。飛躍的な増加など考えられないから、行きつ戻りつしながら3度目の冬に突入していくのだろう。ネット販売は登録数が増えていることもあって、売り上げは増えている。しかしこれもいつかは頭打ちになるのかなと思っている。古本屋だけでやっていくのは遠い道のりだ。
昨日四谷書房さんが、ツイッターで興味深い記事を紹介されていた。「ブックオフを急成長させた出し切りという戦略ストーリー」(秋山基・日経ビジネス3月29日)
現在の会長である橋本真由美氏が店長時代に実践していたことだが、その日に仕入れた本は必ずその日のうちに店頭に出すということをしていたのだそうだ。そうするとその店の売り上げは他の店に比べて飛躍的に増加したのだという。その原因として秋山さんは次のように分析している。
ブックオフの固定客は暇を持て余している中高年の男性が多い。この人たちは頻繁にブックオフを訪れるから、前にきた時と同じような本が並んでいたのでは飽きてしまう。毎日品だしすることで、 棚が新鮮に見えて購買意欲を刺激するというわけだ。
ブックオフとは形態は異なるが、私の店の顧客もやはり定期的に訪れる固定客に支えられている。しかし、だからといってこの戦略が私の店に有効というわけではないような気がする。
秋山さんは勝手に決めつけているが、ブックオフにしたところで顧客のコアな部分は毎日来る中高年なのだろうか。長野市のブックオフの場合、私の印象では店の客の多くはマンガを見にくる子供や若い人であるような気がする。私と同類の人たちだ多くいればもっと目立つと思のだが。
この風が吹けば桶屋が儲かる式の論理は、前提とするブックオフの客の多くは暇な中高年というところでつまずけば、そこから先はまた違う展開になるのではないか。橋本会長が「出し切り」で成功したのは、本好きの中高年のせいではなく、毎日せっせときてくれるセドリの人たちのせいではなかったのだろうか。とすると、セドリの方が来ない私の店にはどうもこの戦略は当てはまりそうにない。
古本屋の顧客の中心は定期的に来てくれる常連のお客さんであることはまちがいないが、それは中高年というわけではない。年代は関係なく本好きな層というのは常にいるのだ。中高年であっても本を読むことに興味がなければ古本屋には来ない。ただその層が確実に減ってきていることは確かだ。
そういう顧客のために毎日品だしすることは無駄ではないだろうが、そんな姑息な手段で顧客が満足するとは思えない。
私がお客さんから言われて嬉しい言葉は「おもしろい本がありますね」ということだ。いい本がありますねとか立派なお店ですねという褒め言葉より嬉しい。もっとも、私の店を立派だなどと褒める人はいないのだが。
毎日棚を新鮮にするということより、お客さんにおもしろがられる棚にする。難しいがその方がおもしろそうだ。


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Posted by 南宜堂 at 23:04│Comments(0)古本屋の日々

 
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