2009年08月20日

龍馬と歳三

 坂本龍馬と土方歳三は幕末の二代スターである。と決めつけてしまうのは私的な感想にすぎないと言われてしまいそうだが、人気度という点でいったら双璧であろう。
 この二人、同時代に生きた人ではあるが、その行動、政治思想あらゆる面で正反対の人であった。しかし、あえて見つけようとすると共通点もないことはないのである。実はこの二人生まれた年が天保6年で一緒なのだ。土方歳三は5月5日、坂本龍馬は11月15日だから、半年ほど土方が早い。そして亡くなったのも二人とも30代の前半、駆け抜けたような短い生涯であった。
 松浦玲氏は著書「勝海舟」(中公新書)の中で面白い見解を示されている。「維新変革の全コースの中で、多くの日本人を新しい統一国家を目指す運動へとかりたてる決定的な契機となったのは、なんといっても、嘉永6年(1853)6月のペリー来航である。」とした上で、そこから明治維新にまで突き進むのに中心的な役割を担っていく人々が「分担した仕事と、嘉永6年癸丑の年という時点でのその年齢との間に、密接な関係があるように思えてならない。」というのである。
 その後、「倒幕・維新の政治行動の中心となった面々」すなわち、西郷隆盛・大久保利通・吉田松陰・桂小五郎・坂本龍馬・岩倉具視などは皆当時10代から20代であった。
 そんな志士たちの師匠筋に当たる佐久間象山・緒方洪庵・横井小楠・藤田東湖といった人たちはいずれも40代から50代という年代であった。
 坂本龍馬も土方歳三も19歳という多感な時に、黒船の来航という大事件に遭遇したのである。


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Posted by 南宜堂 at 23:30│Comments(4)幕末・維新

この記事へのコメント

こんばんは。

 坂本竜馬と土方歳三という、敵対する二人にも、時代背景という共通点があったんですね。でも、何故か、わたしは、昔から坂本竜馬にあまり興味がもてないんですよね。トイレの百ワット的な人柄が苦手なのかもしれません。でも、この二人、姉に頭が上がらなかったという共通点もありますね。考えようによっては、若気の至りが世の中を動かすという、愉快な時代だったのかもしれません。
Posted by ちよみ at 2009年08月20日 23:44
ちよみさま
 実は共通点はまだあって、二人とも司馬遼太郎の小説の主人公になっているということです。そして、私たちが抱く二人の人間性というものも、司馬さんの小説に描かれたイメージによって語られている部分もあるのではないでしょうか。
 実際の坂本龍馬はもしかしたらもっと暗い人だったのかも知れません。そして土方歳三はもっと鈍重な男だったのかもしれません。歴史と小説は食い違いがあるようです。
Posted by 南宜堂南宜堂 at 2009年08月21日 09:25
こんにちは。

 そうですね。司馬さんの小説にあるイメージで語られる竜馬像や歳三像は多いですね。わたしは、司馬さんの坂本竜馬が主人公の小説は読んだことがありませんが、テレビドラマでも、そういう物をイメージして描いた方が視聴率が上がるのでしょうね。
 ただ、わたしの竜馬が苦手な感覚は、それとは別なところにあると思うのですが、薩長を結びつけるという考え自体に、「余計なことをしてくれて」という思いが、子供の頃からあったためだと思います。(笑)
 土方歳三の実家の周りで話を聞きますと、歳三は、気さくで、如才なく、腰が低いというイメージの人が意外に多いので驚きました。
 司馬さんの小説の、あのむっつりとした冷徹なイメージとは、確かに違いますね。
Posted by ちよみちよみ at 2009年08月21日 11:26
 現実的に考えれば、倒幕派の先鋒である薩摩と長州を結びつけるというのは自然な流れであったと思います。龍馬という人は夢想家のように言う人もいますが、意外と地に足をつけた考え方をした人ではなかったでしょうか。
 このふたりについては、本文でももう少し考えてみようと思っています。
Posted by 南宜堂 at 2009年08月22日 09:36
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