2011年09月26日

薄幸の作家、小山清

薄幸の作家、小山清 昨日は、12時半頃に店を開けて、15時半頃に店番を代わってもらったのだが、その間来店客は1組、売り上げはゼロという惨憺たる状態であった。こんな日がひと月に何度かはある。
 ジェットコースターに乗っているような売り上げの上がり下がりは、もうすっかり慣れてしまったが、そうは言ってもそのいちいちに反応して、喜んだり嘆いたりするのは、我ながら情けない。
 こんな日は開き直ってと、今度当店に設けることになったつん堂文庫から1冊を抜き出して読みはじめた。 つん堂文庫については改めて書くことにしよう。
小山清「小さな町」みすず書房
 この作家には思い出がある。20歳ころに憧れていた女性が小山清が好きだと言っていたので、私もいくつかの短編を読んだことがあったのだ。 どんな本でどんな内容だったのか、もうすっかり忘れていた。
 「 小さな町」は読んだことがなかった。かつて新聞配達をしていた町の思い出を綴ったものだ。この町は東京大空襲で焼け、そこに住む人々も散り散りになってしまった。ただ、作者はそのことについては強く言及していない。そこに住んだ人たちとの思い出を愛惜を込めてたんたんと描いている。
 この作家の作品がいま、多くの読者を獲得しているのだという。上記のみすず書房の本も最近になって出版されたものである。小山清に限らず、いま、私小説といわれる昔の地味な作家の作品がよく読まれているということを聞いた。私は小説の類はほとんど読まないので、そのへんのことはよくわからないのだが、商売柄地味な作家の本に法外な古書価格がついていてびっくりすることがある。
 貧しいが慎ましやかに暮らす人々に共感して小説を書いた作家がいて、その作家の作品に共鳴する熱心な読者がいる、こういう構図は罪がないといえばその通りなのだが、ちょっとこれでは寂しいのでは。もっと型破りの作家に人気が集まってもいいような気がする。


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Posted by 南宜堂 at 21:56│Comments(0)古本屋の日々

 
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